文新協とは

文新協とは、文化財保存新潟県協議会の略称です。

 最近、にいがたの遺跡が全国の熱い注目を浴びています。「沼垂城」木簡の出土で県民に衝撃を与えた古代の役所跡、和島村(現、長岡市)八幡林遺跡。弥生時代、女王卑弥呼が誕生する前夜の「倭国大乱」がこの新潟の地に迫っていたことを明らかにした上越市裏山遺跡は、その保存を求める声が県内外からたくさん寄せられました。朝日村(現、村上市)のダム建設予定地で発見された奥三面遺跡群では、美しい山峡に花開いた旧石器・縄文時代の村々の豊かな暮らしが甦り、多くの人々を魅了しました。
 このように、私たちを驚かせるような発見の中で、実は多くの遺跡が破壊されています。新潟県でも1984年以来、中郷村(現、上越市)籠峰遺跡、見附市耳取山遺跡群、新津市(現、新潟市)八幡山遺跡、そして八幡林遺跡、裏山遺跡などを守る大きな保存運動が次々と起こり、貴重な成果を積み上げてきました。その運動の中心となってきたのが、県内に住む文化財保存全国協議会(略称、“文全協”)のメンバーでした。文全協は、破壊の危機にある列島各地の遺跡を守るため、研究者と市民が手を結んで、ともに学び、行動する日本唯一の全国組織です。結成は1970年にさかのぼり、以来たゆまず活動を続けてきました。新潟県の遺跡を守るためにも、文全協は大きな役割を果たしてきたのです。

文化財保存新潟県協議会(略称、“文新協”)は文全協の新潟県支部として、1996年8月に県内の文全協会員を中心に結成されました。発足直後から上越市「裏山遺跡を守る会」とともに裏山遺跡の保存に取り組み、惜しくも遺跡は破壊されてしまいましたが、大きな運動の盛り上がりを実現し、文化財保存の県民世論を画期的に高めることができました。
 文新協は今、研究者と市民が一緒に地域の歴史を学ぶ活動に取り組んでいます。そして、地域の豊かな歴史像を甦らせ、自然と文化財を生かした町づくりをみんなで考え、実現したいと願っています。歴史と遺跡を愛するすべての方々の入会を心からお待ちしています。
                 文化財保存新潟県協議会 初代会長  甘粕 健(故人)


 新会長への就任に当たって       橋本 博文
 このたび、はからずも会長の任をお引き受けすることになりました橋本です。甘粕前会長のあまりにも急なご逝去に心の準備ができておりませんが、僭越ながら微力を尽くしてまいりたいと存じます。皆様からの変わらぬご協力を、切にお願い申し上げます。
 さて、本号も51号を数えることになり、新たな節目を迎えることになりました。思えば、本会文新協が結成された1996(平成8)年は上越市裏山遺跡の弥生高地性環濠集落の保存運動が巻き起こった年でもありますが、わたしが勤める新潟大学旭町学術資料展示館(通称:あさひまち展示館)には、その裏山遺跡の模型が展示されています。製作者は、わたしの教え子であり、本会の最年少会員でもある長野県在住・在勤の小池勝典君です。彼は、この遺跡の現地に立ったことはありません。なぜなら、彼が考古学を志した時点では既に当遺跡は上信越自動車道の建設のため破壊されていたからです。大学の授業の中で取り上げられ、その重要性に気付いた小池君は考古学研究部の学園祭用にと模型の製作を思い立ちました。その際、部活の顧問をしていた自分が少しばかりお手伝いをしましたが、学園祭が終わったあとで、この模型の意義を伝えるべく、あさひまち展示館に引き取って展示させていただいているものです。先日も、日本文化起源論の授業の一環で、展示館を見学した折、この模型の製作の経緯を熱く語ってしまいました。それまで、漫然と見学していた学生の目が、その時光り輝いたのがわかりました。文化財というのは、このように次代に伝えていくべきものなのだなと、しみじみ思いました。模型の脇の写真パネルには、裏山遺跡の環濠を熱心に視察する故・甘粕前会長の姿がありました。
 次いで、わたしは甘粕前会長の新潟での文化財保護運動の足跡を語りました。裏山遺跡の破壊後、その運動を総括し、『越後裏山遺跡と倭国大乱』の本となりました。甘粕先生は、よく老若を束ねられ、その運動を発展させていきました。前述したように文新協の活動も、その延長線上にあるわけです。その後、上越市では平地の弥生環濠集落であり玉作遺跡である吹上遺跡が、国道のバイパス工事の際に破壊されようとしました。しかし、その重要性を訴えた結果、トンネル工法は採用されなかったものの、橋脚で跨いで高架にして遺跡の保護が図られました。後に同遺跡は国史跡になっています。続いて、下越の神林村(現村上市)で、裏山遺跡と同様な日本海沿岸東北自動車道の高速道路建設に伴い、日本列島北限の弥生高地性環濠集落、山元遺跡が発見されました。この遺跡も裏山遺跡と同じくオープンカットで壊される運命にありました。しかし、裏山遺跡の轍を踏むことなく、保存されることになり、裏山遺跡で提唱されたトンネル工法が導入されました。これまた国史跡の指定を受けました。さらに、最近では先の上越市で北陸新幹線の新駅建設に伴って低地の弥生終末期環濠集落、釜蓋遺跡が姿を現しました。こちらも国史跡となり、今後の調査・整備・活用が期待されるところとなっています。いずれも、裏山遺跡の保存運動があったればこそ、です。
 このように、本会の活動も「裏山遺跡」の原点に立ち返って、甘粕前会長の志を継承し発展させていきたいものです。
                 (2013年2月3日発行『会報』第51号より)


文新協に入会するには

 文新協はこれまで、考古学を専門的に学ぶ研究者や学生だけでなく、「歴史を学びたい!」「難しいことはわからないけど、遺跡が大好き!」という一般の市民の方々と一緒に様々な活動に取り組んできました。県内だけでなく、長野・群馬・福島などの隣県の遺跡をめぐるバスツアー。歴史や遺跡に学ぶ講演会。おとなも子どもも、ともに遺跡に遊び・学ぶ「古代まつり」。そして、ひとつのテーマをじっくりと学習する「連続学習会」などなど。それらはすべて会員の方だけでなく、多くの市民の方々にもご参加いただき、大好評です。その秘密は、必ず第一線で活躍される研究者の方々によるお話やご案内をいただけること。そして、会員をはじめとするたくさんの方々との手作りの催し物である、ということでしょうか。もちろん、全国組織である文全協からも、多くの支援を得て活動していることは言うまでもありません。
 私たちの願いは、新潟県でも遺跡に対する関心が高まり、遺跡を守り学ぼうという多くの仲間が増えることにほかなりません。そのために、ぜひとも文化財保存全国協議会にご入会いただきたいのです。新潟県内在住の方が、文全協に入会されると、自動的に文新協会員にもなります。入会すると、文全協からは、機関誌『明日への文化財』、連絡誌「文全協ニュース」によって、文化財をめぐる全国の、ホットで密度の濃い情報をお届けします。また、大会・見学旅行などに参加して、全国の運動の成果にじかに触れ、交流を深めることが出来ます。あわせて、文新協の行事でも優先的に参加いただけます。ぜひとも、多くの方々のご入会を願いいたします。

⇒詳しくは、文化財保存全国協議会のホームページをご覧ください。

 または、本ホームページの「お問い合わせ」からご連絡ください。